多様性を大切に。
すべての存在に意味があること、
共生の根っこを少しでも伝えたい。

【先輩インタビュー05 山田さやかさん】
2009年入職、16年目。乳児リーダー。
こだわりある保育・働き方を体現する、もみじ保育園のロールモデル的存在です。

(このインタビューは2022年に実施したものです)

今の担当やお仕事内容を教えてください。 

乳児(0・1・2歳の3クラス)リーダーを務めています。1・2歳の担任は若い先生が多いので、保護者さんへの対応や子どもたちのことなど、日々の具体的な相談を受けることが多いですね。ほかは、行事前の段取りやみんなでどうチームワークをとって動くかなど、全体の調整をさせていただいています。 

保育士になったきっかけは?

前職は3年間、図書館司書をしていました。図書館で働いているときに、絵本も子どもも好きだったので、児童館で読み聞かせの会をさせてもらったり、移動図書館で保育園や幼稚園を巡回していました。それが一番楽しいお仕事だったので、次は子どもに関わる仕事をと思い、そこから資格をとり保育士になりました。 

もみじ保育園を選んだ理由は? 

いろんな園を見学させていただいた中で、もみじ保育園の第一印象がとても良かったのが大きいですね。雰囲気がいいなと。そのときの子どもたちが、とても落ち着いていました。自宅近くには、もっと通いやすい園があったんですけど、もみじ保育園を選びました。

あと、お部屋の装飾だったり、保育者の方の子どもへの言葉がけだったりが、他の園とは違いました。いろんな種類のおもちゃや、季節に合わせた自然の植物、木の枝を取り合わせたものが飾ってあったり…。温かい落ち着いた雰囲気だな、きっとこだわりのある保育をしているのかなと感じました。それで、お話を聞いたら担当制と伺って。“少人数でじっくりみる”というのは自分に向いていそうだと思って志望しました。

現在保育士16年目、ずっともみじ保育園にお勤めですか?

いえ、家族が体調を崩して一度退職したことがあります。だけどまた、もみじ保育園に帰ってきました。退職している間、別の仕事や別の人生の可能性も考えてはみたんですけど、家族の体調が落ち着いたら、子どもたちやもみじ保育園の居心地の良さが恋しくなって、復職しました。

「クラス全体が一つの家庭に。
園が“第二の家庭”となることで一体感のある生活へ。」

山田さんにとってもみじ保育園の魅力とは?

もみじ保育園の理念となっている「一人ひとりを大切に」というのが一番の魅力だと思います。たとえば、お誕生日会は、その月のお誕生日の子を集めてまとめてお祝いではなく、各クラスで必ずその日に、一人一日お祝いします。「その子が生まれた特別な日」を大事にして全員で関わる。20人クラスだと20回お誕生日会があるんですけど、お誕生日のお友だちを見て、自分の番を待ちわびる…なかなかないと思います。

 

ただ単に保育園が“お仕事の間にお母さんを待つ場所”ではなく、“第二の家庭”として保育者やお友だちと過ごす場所になるように。特に縦割りで3学年が一緒になる幼児は、本当に兄弟姉妹のように、家族のような一体感を感じられるように。そして乳児は担当制で極力一対一で丁寧に関わることで、その子の自己肯定観を育んであげたい。そんな思いで関わっています。

居心地の良い雰囲気づくりで心がけていることは?

部屋を整えることですね。装飾などで見た目に季節感を感じたり、部屋がきれいに整っていることで情緒が落ち着くことを願っています。環境によって精神衛生が保たれる面もあると思います。

長時間、集団で過ごすので、「危ないでしょ!」とか「やっちゃだめ!」とか、子どもたちにとって注意を受け続けることは、ストレスだと思います。だから、最初から注意をしなくてもいい環境設定だと、子どもはのびのび過ごせるんじゃないかなと考えて、危ないものを置かない、無駄な注意をしないことで、子どもたちが落ち着けるように気を付けています。「危ないでしょ」って注意しても、「そんなところに机があったら乗りたいよね」って思いますし、乳児の間はまだ言っても分からなかったりするので。極力無理なく過ごせるように。子どもが注意を受けなくても安心して遊べる環境を保育室に設定する、というイメージです。
 

そんな心がけが自己肯定観につながるんですね。

もみじ保育園の理念「一人ひとりを大切に」の根底には、「自己肯定観を育てたい」という思いがあるんです。否定されたり、注意を受けることが続いて、自分に自信が持てなくなったり、毎日が嫌な気持ちになってしまっては子どもたちがかわいそう。だから、廊下を「走らないで!危ないでしょ!」じゃなくて、「一緒に歩こうね」というように、“してほしい言葉”をかけるようにしています。

働く場としてのもみじ保育園はどうですか?

職員間も仲がいいというか、穏やかでトラブルがないので、とても働きやすいです。事務所の方もみんなやさしいですし、安心して働けます。

産休・育休から復帰してきた先生がお子さんをもちながら、できるだけ無理なく働けるシフトを組んで、みんなで協力しています。以前は、結婚したり、子どもができたりしたら退職される方がほとんどでしたが、戻ってきて子育てしながら保育士を続けられる先生が増えて。ほかにも、短時間だけ働きたいという地域のお母さんの受け皿にもなって、ご活躍されている方が実際にいらっしゃいます。うれしい変化だなと思っています。

山田さんご自身も復職されましたね。

はい、そのときも「いつでも待ってるから」とやさしく声かけていただいていたので、そのまま帰ってきちゃいました(笑)。なので、もみじ保育園はみんなにとって “戻れる場所”でもあるのかなと思います。

そして、子どもたちに毎日、元気をもらっています。体調が悪かったり、個人的なことで気分が良くなかったりしても、保育園のドアを開けたら、「山田さーん!」と、子どもたちが笑顔で抱きついて迎えてくれるので、自然に元気が出ます。ありがたいです。一度、保育士を辞めましたが、でもやっぱり子どもたちが恋しくなりました。保育士って、ずっと夏休みの宿題あるみたいな仕事じゃないですか。お便り作らないといけないとか、行事があるから何を用意しなきゃいけないとか、自分の中で温めておく仕事がすごく多くて。タイムカード押したら終わりではない。しかし、それでも帰ってきたのは、子どもたちがかわいいからと、もみじ保育園の環境が良いからですね。

実習生の方にとっても良い実習の場となりそうですね。

誰も恐い先生がいないからのびのび実習できると思います(笑)。子どもたちともゆっくり関われる。若い先生が多いので、新卒の方にとっては身近なお姉さんのような存在であり、先輩であり、相談相手でありという感じではないかなと思います。今の1・2歳児クラスの先生を見ていると、萎縮することなく自然な感じで信頼関係を築いて働けているようです。  

「リーダーになったことで、よりみんなと協力しやすくなりました。 」

現在は契約職員として、乳児リーダーを務められていますね。

正職にと言っていただいたんですが、時間を限って働きたいという思いがあったので契約職員として働いています。正職でなくても担任に入ったり、リーダーとして動いたりできるよう、そういった新しい働き方の枠を提案してくださりました。私のわがままを叶えてもらっています。私も園のためにできることがあればしたいと思うので、2021年度から乳児リーダーを務めさせていただくことになりました。 

産休・育休の方や、私みたいに時間を限って働きたい人にも誠実に対応してくださる職場だなと思います。 

 

リーダーになって変わったことは?

リーダーという立場があるからこそ、若い人とコミュニケーションがとりやすくなって、お互いに話しやすくなったなあと感じます。よりみんなと協力しやすくなりました。それがとてもありがたいですね。保育を見ていて、もっとこうした方がいいんじゃないかなと思うことがあっても、突然よそのクラスの先生がポンと口出すのと、リーダーが心配して提案するのとでは、全然ニュアンスが違ってくると思うんです。

後輩の方々から相談を受けることが多くなったのでは?

そうですね、今は相談するより受けることが多くなりましたね。私の経験だけだと主観的すぎるし、善意の押し付けになってもちょっと違うかなと思うので、客観的な事実やデータを元に話せるようにしています。本読んだり、保育の論文を調べたりするのが好きなので、「こういう事例があるから、こういう対応をしたらどうかな?」など、ニュートラルな立場で情報共有しています。

先輩として、リーダーとして心がけていることは?

乳児の発達のポイントをできるだけ伝えるようにしています。成長過程を正しく理解することで一人ひとりに応じた無理のないサポートができると考えています。また、誰かが休んだりするときには絶対に嫌な顔はしないようにしています。みんなが気持ちよく休めるように、「お互い様やから大丈夫。休み、休み。」みたいな感じで声をかけています。そうしないと若い先生方が遠慮して休みを取りづらくなると思うので。

「やりがいは、人の成長や人生の過程をみて、学ばせてもらえること 」

仕事としてのやりがいは?

一番はミルクを飲んでいた子どもたちが、歩くようになって、話すようになってと、その成長を毎年見せていただけるのが本当に楽しくて、かけがえがなくて、とてもうれしいです。
自分が年齢を重ねるようになって、子どもだけではなくて、同僚や若い先生、お母さんたちが、どんどん自信をもって、生き生きと自分から仕事をできるようになっていく姿を見ると、心から感動します。私が特に役立っているわけではないので、 人の成長というか、人生の過程を一緒に学ばせてもらってる感覚です。そういうことも仕事のやりがいの中にありますね。

子どもたちとの関わりで印象的なエピソードはありますか?

何でもないことですけど…私たちは普段、スリッパを履いていて、部屋に入るときはできるだけ端にそろえてきれいに置くようにしてるんですね。
以前、私が0・1歳を担当していた子で、ちょっとおっとりしていて泣き虫な男の子がいたんです。5歳児になったある日、彼がサーっと階段を上っていく姿を私は後ろから見ていました。彼がお昼寝の部屋に入るときに、たまたま保育士のスリッパがちょっと横にずれてたんです。すると、誰も見ていないと分かっているはずなのに、キュッと正して中に入っていきました。私たちの姿をよく見てくれているんだなあと思いました。保育者が普段気を付けていることは自然と子どもたちに受け継がれているんだなあ、と。あのおっとりしていた赤ちゃんが…とすごく印象的でした。褒めてもらうためではなくて、自分で気が付いてできることは素晴らしいですよね。それからまた意識をして、毎日スリッパをきれいに脱いでます(笑)。

反対に大変なことは?

やはり、いろんな考え方の保護者さんがいらっしゃるので、保護者さんとの関わりが難しいと感じるときはあります。一生懸命やったことがそのまま通じるかというと、そうじゃない場合もあるので。子どもたちに、私はこういう意図をもってアプローチしているので、園と歩調を合わせて、おうちでも何となく同じような援助を…と伝えたくても、それがちゃんと伝わるとも限らなくて…。
でも、話せるタイミングでは、できるだけ保護者さんに子どもたちのことを伝えるようにしています。私は乳児の担任なので、わりと細かく、今こういう発達の過程なので、こういうおもちゃ遊びをしていてとか、今は指先の動きをアプローチしていてとか、口頭や連絡帳で伝えることで、保護者さんに歩み寄ったり、気付いてもらえたりすることがあるかなと思います。お母さんと楽しそうに話している先生の姿を見ると、子どもも安心すると思います。

働くうえで大切にしていることは?

子どもたちだけでなく、周りの同僚や誰に対してもですけど、“多様性”ということをすごく大事にしています。きれい事を言うようですが、良いも悪いも関係なく、すべての存在に意味があって、みんなでこの地球上で共生しているんだよっていうことの根っこみたいなものをほんの少しでも伝えていけたらと思います。

だから、本当はそんなに好きじゃない虫もいるんですけど、子どもたちには、めずらしい虫をつかまえて見せたり、その生態の話をするようにしてます。部屋にいるような小さいクモを観察して、「じゃあクモは何でそこにいるの?」「何を食べてるの?」という感じで。「みんなが嫌いなゴキブリの赤ちゃん食べてくれてんねんでー」と言うと「えー!すごいー!」ってなったりもします。どんな役割の生き物にも意味があるということを、ちょっとずつ、ちょっとずつ伝えたくて。

良くも悪くも、私たちのリアクションで子どもたちの価値判断や認識が生まれます。ちょっと気持ち悪いなと思っても、あえて「すごくかわいいね!」とか「変わった形だね!」と。大人が「気持ち悪い」と言わないことで、子どもたちは意外と虫を恐がらなかったりするんです。特に赤ちゃんは心が真っ白なので。大人が「いやー!気持ち悪い」て言っただけで、子どもはそういうもんなんだと思って、「気持ち悪い」「もう見たくない」てなるんです。「めっちゃきれいな色ー!見て見てー!」て言うと、「ほんまやー」みたいな発見がある。見た目で物や人を差別しないといったことに全てつながってくると思います。分からないもの、見慣れないものを拒絶するんじゃなくて、「興味をもってみよう」「理解してみよう」と思えるように。見た後に、「これ何ていう名前やと思う?」「本で調べてみよか!」「あっちに本あったんちゃう?」と広げるようにしたりなど、微々たる力ですけど、そういった声がけをすごく大切にしています。

「自分が親でも預けたい 」

子どもたちにどんな大人になってほしいと思いますか?

“言葉で思いを伝えられる人”になってほしいなと思います。大人になって、嫌な顔をして一言も発さずに会議乗り切るとか、お茶って言わないでお茶を求めるとか、そういった人になってほしくない、と。

言語化する能力がつくことによって、子どもたち自身が泣いたり、不快な時間が減ると感じているので、ジェスチャーや仕草で必ず思いを確認してから介助をするようにしています。仕草をしてくれるまで待つ――時々、子どもは察してほしいと思っているかもしれないですけど、ちゃんと相手に気持ちを伝えて、それに温かい反応が返ってくるということを0・1歳から積み重ねで示すようにしています。

例えば、しゃべれないときは、両手を重ねてトントンする仕草を示すことで、“ちょうだい”を表現したり、「もう1回!」と泣くのではなくて、指を1本立てて伝えたり。話した方が泣くよりも解決が早いということを積み重ねてやっていると、そんなに泣かなくても過ごせるようになります。

先日、入ってくれた実習生は「赤ちゃんって言葉が話せないからもっと泣くと思ってました!お部屋が静かでびっくりしました」と言ってくれました。

もみじ保育園は担当制で、気持ちを込めてみられるのが良いところだと思います。自分が親でも預けたいと思います。一人当たりの保育士が受け持つ人数は同じでも、朝昼夕とみる先生が全員違ったら、同じアプローチで言葉や仕草を伝えるのは難しいし、関わり方の密度も全く違うと思うんです。

今後のもみじ保育園についてはどうですか?

もっとみんなが働きやすくなっていけばいいなと思います。今でも働きやすい職場なんですが、もみじ保育園で働きたいという先生が更にたくさん集まってくれば、休日面などさらにいろんな処遇も良くなっていけると思うので。そのためにもみんなで仲良く楽しく働けるようにと心がけています。

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